• 津曲茂久(獣医学博士)

犬は生涯オオカミの子供である?

最終更新: 2月14日

ノーベル賞を1973年に受賞したオーストラリアの動物行動学者であるローレンツ博士は、行動学的見地から犬の祖先はオオカミ系とジャッカル系の何れかであろうと仮説を提唱しました。即ち、独立心の強い他人に慣れない犬種(エスキモー犬など)はオオカミ系であり、反対に、従順で誰にでも慣れ易い犬種(多くのヨーロッパ系犬など)はジャッカル系であろうという仮説でした。

 

 しかしながら、その後のDNA研究の結果から犬の祖先はオオカミ(東アジア)であることがほぼ確定し、ジャッカル説は否定されています。いずれにしても人間が犬を最初に“家畜化”してから僅か約14,000年しか経過していないことは、姿形がどのように変わろうがその特性は祖先であるオオカミの形質を多く受け継いでいることを忘れてはならないと思われます。それでは、犬の家畜化において、どのような形質を受け継いたでしょうか?


 一言で表すと、“幼児化”です。


 要するに、犬はオオカミの幼児期の多くの特徴を持っています。まず、多くの犬種で成体の大きさは小さくなり、鼻先の長さが短縮する傾向が強まり、逆に額が隆起し、頭骸骨の幅が広くなりました。即ち、この形態はオオカミの幼児期に近いとされています。それでは犬の行動はどうでしょうか。結論的には成犬の行動は驚くほどオオカミの子供と類似しています。即ち、犬はしょっちゅう関心を引こうとしたり、ふざけたり、腹ばいになったり、甘えるように鳴いたり、やたらと吠えたり、オオカミが成長するとやらない行動を犬は生涯継続する傾向があります。

 

 オオカミが犬になる過程で幼児化は必然的であったと思われます。野生の祖先がもっていた成熟期における高い攻撃性や厳格な縄張り意識、柔軟性のなさは人間と共同生活する上で好ましくない性格と判断されました。特に群れの最上位に君臨するアルファは適応が困難であったと思われ、一番地位の低いオメガが人間環境への適応能力が高かったと想像されています。犬の家畜化の歴史は、人間環境への適応能力の低い個体を淘汰し、扱いやすい個体を優先する傾向が高くなりました。


 数多くの犬種の中でもキング・チャールズ・スパニエル、 シェットランド・シープドッグ、 フレンチ・ブルドッグなどは比較的幼児性の強い犬種とされていますが、どのような犬種においても飼い主が過度に甘やかしたり、適切な社会化期(3~12週齢)を経験しないと、犬は「永遠の子犬症候群」となります。飼い主への依存性が過度に強いと、飼い主から離れられず、飼い主が不在になると注意を引くためのあらゆる問題行動を起こす「分離不安症」などはその典型です。中には飼い主の注意を引くために足を引きずったり、両後肢麻痺の“演技”をしたり、誕生したばかりのヒトの赤ん坊から飼い主の注意を引き戻すために赤ん坊を攻撃することさえあります。

 

 いずれにしても、犬は人間環境に適応性の高い動物の子孫でありますが、飼い主が犬に適応することを望んでいる訳ではなさそうです。

 

 #キング・チャールズ・スパニエル #フレンチ・ブルドッグ #シェットランド・シープドッグ

TkanLab企業ロゴ.png
LINKS
ABOUT

お問い合わせ

​TkanLab

利用規約

プライバシーポリシー

特定商取引に基づく表記

​免責事項

  • Facebook
  • Twitter

© 2020  TkanLab,INC. All Rights Reserved.​